俺が中国の広州から桂林へのバス移動で度肝を抜かれたときの話

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みなさん、こんばんは。

俺

ねじれ日本語教師のサナダです。

前回までのあらすじ

俺は日本語学校の留学生募集業務で中国を訪れた。しかし、中国に入国した初日の夜、広州の現地キャバクラでパスポートを失くしてしまった。あるいは、盗られた。

翌朝、警察に行って、紛失届か盗難届を発行してくれと言ったら、

警官
警官

なんで日本人の失くしたパスポートを中国人が探さなきゃいけないんだ?

と断られた。

さすが中国の警官だ。自分の業務タスクに優先順位をつけて、外国人の対応よりも、まずは自国の治安維持のため交番前で茶をすすりながらムダに時間をつぶすことを最優先する使命と責任感に溢れた、とても尊敬できる姿勢だ。

俺

なわけ、ねぇーだろうが。

さらにその警官は、「落としものをしたんなら、新聞広告に載せればいい」という、めちゃくちゃな提案をしてきた。

くだらねぇ冗談に俺は怒りを通り越して笑ってしまったが、警官が表情ひとつ変えず真顔でそう言うのを見て、血迷った。

俺

少なくとも中国ではそうなのか。言う通りにしたら本当にパスポートがでてくんじゃねえか。

警官
警官

けへへ、さっさと広告掲載料の100元よこせや。

ということで、俺は警官に手数料を払って新聞広告に、テキトーな中国語で「パスポート求む」という主旨の広告を掲載してみた。

我紛失我的日本旅券在酒飲店、我探求我的日本旅券

結果はもちろん、パスポートがでてくるはずもなく、その代わりに日本領事館から連絡を受け、前代未聞の愚行だ、とこっぴどく叱られた。

どうやら俺は警官の小遣い稼ぎに、まんまと利用されたようだった。

俺は領事館で面倒な手続きをし、パスポートの再発行を申請した。

再発行されるまで10日ほどかかるとのことだったので、その間に俺は桂林に行って留学生募集の仕事を終わらせてしまおうと思った。

一仕事終えて広州に戻ってくる頃には、再発行されたパスポートを受け取れるだろう、という算段だった。

いざ、桂林へ。そして洗礼を受ける

俺は広州のバスターミナルから桂林行きのバスに乗り込み、一路桂林を目指した。

バスの乗客は、9割が現地の中国人で、残りの1割が欧米人の旅行者だった。出張用のボストンバッグにワイシャツ姿の俺は誰がどう見ても旅行者には見えず、現地の中国人にしか見えなかった。

バスは延々と中国の大地をひた走った。俺は中国大陸のバカ広さに度肝を抜かれた。

この大地はずっとずっと、どこまでもつづいているのだと、むき出された岩肌の質感や赤土の色合い、風を受けたときの肌感や匂いをとおして、その広大さを実感した。

俺

島国とはなにもかもスケールが違うな。

広州からバスでたかが数キロ内陸に入っただけだったが、俺は中国の懐の広さに魅了された。

バスの車内を眺めると、乗客は思い思いの表情で景色を見つめていた。きっとそれぞれにドラマがあるんだろうなと、俺は柄にもなく感傷的な気分になっていた。

ふと、座席下の足元に目をやると、小さな池が広がっていることに気づいた。池は俺の靴を半分ほど浸していた。

ん?

なんでバスの車内に池が?いや、これは水溜まりだ。

そのとき、隣の座席に座った中国人のおっさんが痰を切るのが視界に入った。

隣の座席の男
隣の座席の男

かーあ、ぺっ!

耳を澄ませると、いや、耳を澄ましてみるまでもなく、聞こえてきた。

ま、ま、ま、、、まさか。

ひっきりなしに、何度も何度も、このおっさん、痰を切ってそれを足元に吐いてやがる。

そ、それが水溜まりとなって、隣の俺の足元までひたひたに浸していた。

ぎゃああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

な、な、なんてこった。

俺はバスの車窓に流れる大陸の景色に気をとられていて、隣の座席のおっさんの奇行に気づかなかった。

かーあ、ぺっ!

俺は衝撃のあまり大声で叫んだ。

俺

どうなってんじゃい!

俺の大声に驚いた隣のおっさんが、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をした瞬間、後方からも聞こえてきた。

かーあ、ぺっ!

よくよく車内に意識をむけると、あちらこちから同時多発的に聴こえてくるではないか!

かーあ、ぺっ! かーあ、ぺっ!

俺

くーーーっ!信じらんねぇ!

そもそも、なんでバスの中で痰を吐くかね!幼稚園で習わんのかね!?公共のものは大切にしなさいと。

新たな洗礼 This is the 中国 style.

バスが小さな村で止まった。トイレ休憩だ。俺は片足が痰にまみれたショックで、真っ青な顔のままバスを降りた。

俺

そもそも、なんで車内でみんな痰を吐きまくってんだよ。とほほ。

途中下車したのは、中国の名もない農村だった。本当に気が遠くなるほど、何もない農村だった。

公衆トイレに向かう乗客たちについて行き、俺は小便をした。小便で体温が下がったのか、俺は身震いした。

身震いした瞬間、俺は背後から何者かの視線を感じてゾクっとした。

とっさに振り返ると、ドアを開けたまま大便用の和式便器にしゃがみ込む男と目が合った。

俺はホラー映画のゾンビに遭遇したかのような光景に度肝を抜かれた。

てか、ドア閉めて糞しろよ!

車窓に流れる水墨画の世界

俺はショックでふらふらになりながらバスに戻った。

顔面蒼白な俺を見て、隣の座席の中国人が中国語でなにやら話しかけてきたが、俺は何も反応できず、ただただ窓の外の景色を眺めた。

俺

はやく日本に帰りてぇな。

俺はこの出張で初めて日本を懐かしく思った。

俺はそのままぼんやりとバスの車窓を流れる景色を眺めていた。

何時間、バスはひた走っただろうか。気づいたときには、車窓には水墨画の世界が広がっていた。

俺は、これまた別の意味で度肝を抜かれた。

な、な、な、な、なんじゃこりゃーーーーーーー!!!!!!!!!

俺は水墨画の世界に迷い込んだかの錯覚の中、目の前に広がるあまりに壮絶な景色に興奮を抑えられなかった。

桂林の水墨画の風景に夕日が落ちる頃、俺の旅情緒は最高潮に達していた。

日がすっかり沈んだ後、バスは目的地の桂林に到着した。

乗客はみんな、それぞれに桂林の町に消えて行き、欧米系の観光客も客引きに連れられて桂林の闇夜に消えていった。

中国の現地人にしか見えない風貌の俺は、ひとり取り残された。

俺

さて、どうしたものか。

俺はとりあえずバス停留所の近くに見えたホテルにチェックインし、その日はすぐにベッドに潜り込んだ。

翌日、俺はコーディネーターに連絡し、桂林現地で留学生募集の説明会を開催することになる。

<つづく>

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