サッカーはグローバルなスポーツです。世界で最も競技人口の多いスポーツで、最もメジャーなスポーツです。
その一方、オリンピックの種目はどれもマイナー競技で、世界的な注目度や求心力は今ひとつですね。
先進国も途上国も、貧乏人も金持ちも関係なく、世界中の誰もが同じように熱くなれるサッカーってすごいですね。言語や文化を超えた、平和構築のための最強ツールとも言えるでしょう。
世界でもっとも人気のあるスポーツ「サッカー」の中でも、FIFAワールドカップは、選手にとってもサポーターにとっても、そしてスポンサーにとっても最重要イベントです。
4年に1度開催されるワールドカップは、国の威信をかけた戦いが展開され、どの試合も見ごたえのある大会です。
国を代表する選手たちは、その国の国籍を有する必要があり、二重国籍を持つ者などは、どの国の代表選手になるかを決定する必要があります。一度、その国のA代表選手として試合に出場したら、その後、別の国の代表選手になることは叶いません。
たとえば、酒井高徳なんかも、ドイツ代表を選ぶのか・・・という選択肢もありましたが、結局日本代表になりました。
たとえば、あのメッシもスペイン代表選手になるのか・・・と周りはプッシュしていたようですが、当の本人はアルゼンチン以外の代表選手になるなんて、微塵も考えていなかったようです。
今回の記事では、日本へ帰化したサッカー選手にフォーカスしてみたいと思います。
最後にちらっと日本語教育も絡めてみましょう。
日本へ帰化した日本代表選手
まずは、日本へ帰化して、日本国籍を取得し、日本代表となったサッカー選手を見ていきましょう。代表的な選手のみを取り上げてみますね。
ラモス瑠偉(元日本代表)
ラモスさんは、ブラジル出身の元サッカー選手。サッカー選手として1977年に来日。1989年に日本に帰化し、日本国籍を取得。90年代の日本代表のレベルを一気に引き上げた功労者です。
呂比須 ワグナー(元日本代表)
呂比須(ロペス)さんも、ブラジル出身の元サッカー選手。1987年にサッカー選手として来日し、1997年に日本国籍へ帰化。そして帰化直後に、日本代表チームに加わり、日本のW杯初出場となるフランス1998のアジア最終予選突破の救世主となった。
三都主アレサンドロ(元日本代表)
三都主(アレックス)さんも、ブラジル出身の元サッカー選手です。こう考えると、ブラジルと日本のパイプは強力ですね。アレックスの来日は、1994年。ラモスさんとロペスさんとは異なり、アレックスは、明徳義塾高校サッカー部のスポーツ留学生として来日。
2001年に日本に帰化し、2002年の自国開催W杯の日本代表メンバーに選出されました。決勝トーナメントのトルコ戦、あのフリーキックのバー直撃は、今思い出しても惜しいです。
田中マルクス闘莉王(元日本代表)
闘莉王(トゥーリオ)さんもブラジル出身ですが、父親が日系であり、日本に縁があります。ですが、来日時はまったく日本語がわからず、人生で最も辛かった時期とのちに語っています。
来日は、1998年。三都主と同じく、高校サッカー部のスポーツ留学生として来日。2003年に日本へ帰化し、その後、U23代表やA日本代表の精神的支柱として活躍しました。2010年の南ア大会での中澤との鉄壁CBコンビは、安定感ありましたね。
李忠成(元日本代表)
李選手は、東京都出身の現役サッカー選手。上のブラジル出身の方々とは異なり、李選手は、日本生まれの在日韓国人です。2007年に韓国籍から日本へ帰化。2011年のアジアカップ決勝での左足ボレーでの決勝弾は印象的でした。
エスクデロ競飛王(元U23日本代表)
エスクデロ選手は、アルゼンチンの出身。今も国内にて現役選手です。2007年に日本へ帰化し、2008年にはトゥーロン国際大会向けのU23日本代表に選出されましたが、その後、A代表には選出されませんでした。浦和で田中達也やエメルソンと小柄コンビとしてプレーしていたのを覚えています。
余談ですが、浦和時代のエメルソンも青いユニフォームをいつ着るのか、みたいな話題がありましたが、結局、日本への帰化とはなりませんでしたね。
帰化するための条件とは
外国籍から日本国籍に帰化し、サッカー日本代表として活躍した選手をご紹介しました。
それでは、日本へ帰化するのって、どうすればできるのか、見ていきましょう。
帰化に必要なクリアーすべき条件
日本へ帰化するには、以下の7つの条件をすべてクリアする必要があります。
①住所条件:5年以上日本に住んでいて、引き続き5年以上日本に住むこと
②能力条件:日本と母国の両方で、成人年齢に達していること
③素行条件:悪さしてないこと
④生計条件:安定した生活が送れる経済的な基盤があること
⑤喪失条件:二重国籍にしないこと
⑥思想条件:国家を脅かす思想や行動を持っていないこと
⑦日本語能力条件:最低限の日本語力(小3レベル以上)を有すること。
※⑦の日本語能力については、「国籍法」には記載されていません。
帰化に必要な日本語能力
で、帰化するのに必要な日本語能力は、なんなのよ。さっさと言いなさいよ。
条件⑦については、面接で「あれ、こいつちょっとおかしいぞ」と思われた場合のみ、小3レベルの試験を課せられます。
小3レベルとは、日本語教育的には、日本語能力試験のN3相当、と考えればわかりやすいでしょう。
「話す・聞く」は面接時の会話で見られ、そこで不審に思われたら、筆記試験で「読む・書く」を見られる、という流れです。ですから、N3の試験対策に特化するというよりも、4技能をきちんとN3レベル相当以上にしておく必要があります。
ただ、小3/N3レベルというのを真に受けて、語彙力もその程度しかないとなると、アウトでしょう。日本での就労経験も問われる中で、小3とかN3とかにとらわれず、それ相応の日本語能力(という表現しかありませんね。だからこそ、国籍法に明記できないのでしょう)が必要となるのでしょう。
エピローグ
まとめ:帰化するのに必要な日本語能力は、4技能が小3/N3レベル以上の日本語能力が必要だが、日本での就労経験も前提と考えると、「それ相応」の日本語能力が必要となる。
帰化申請に必要な要件は、国籍法に基づいていますが、日本語能力だけが根拠が不明確なため、そこがなんとなく不気味に感じますね。
日本語教育関係者としては、「労働者」の役割として一時的に来日する外国人だけでなく、永住者や帰化者への日本語教育についても、もっと考えていかなければいけませんね。
国外からの広義の労働者受入は、在留期間のオシリが決まっているので、制度のスキームや日本語教育をデザインすることは、やりやすいのでしょう。
その一方で、すでに日本社会にいて顕在化しにくい永住者や帰化者の日本語教育については、放牧状態です。じつは、喫緊なのはこっちの日本語教育なのかもしれませんね。
以上です。それでは、また。
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