元技能実習生アリフさんのライフストーリー【第3話】

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【第3話】同期の仲間の存在、勝ち得た自信、別れの寂しさ

同期の仲間の存在

当番制でハラル料理を自炊する日々

アリフさんはムスリムで、宗教上の理由で、豚肉を食べない。豚肉のエキスが入ったものも食べることができないため、外食は何かと不便であった。

「3年間、基本的には自炊をしてインドネシア料理を作っていました。ナシゴレンや、野菜炒めは本当に何度も作りましたよ」

料理は、同期のインドネシア人の間で、当番制で料理をしていた。

「基本的には3年間、毎日自炊でしたが、給料日や休みの日などには時々みんなで外食に出て、牛丼やそば、回転ずしなどを食べに行きました」

同じインドネシア人と助け合い、協力し合えるかが重要なこと

同じインドネシア人同士、意見が食い違ったときには、よくケンカもした。

「大抵は食べ物のことでしたけどね。食べたいものを当番が作ってくれないときや、他で聴いている音楽がうるさいときとか、よくけんかをしました」

「でも今から思えば、技能実習生としての日本での3年間の生活は、もちろん日本人や日本文化とうまくやらなければいけない部分も多いとは思いますが、同じインドネシア人と助け合い、協力し合えるかどうかも非常に重要なことだと思うんです。僕たちはその点では、とてもうまくやっていました」

3年間の研修期間中に、もうインドネシアに帰りたい、という同期もいたという。仕事が大変で、上司との確執にも苦しんでいたという。

「でもその彼は結局ね、インドネシアに帰りませんでした。みんなで頑張ろうって励まし合ったんです」

同期とは気晴らしに色々なことを一緒にした。日々の生活や仕事はもちろん、旅行に行ったり、土日の休みにはバドミントン、水泳、フットサルなどもよくした。

「工場の体育館は無料で使用できるので、よくそこで色々なスポーツをしました。日本人のフットサルチームと対戦した時は、エキサイトしたなあ」

夜中にパンツ一丁で「そんなの関係ねえ」

インドネシアの家族とは、寮の共用パソコンを使ってやりとりしていたというアリフさん。しかし、ネットに時間を費やすより、日本のテレビ番組を見るのが好きで、休みの日は一日中テレビを見ることもあったという。

「日本の番組は、とくにお笑い番組が好きでした。レッドカーペットなんかをよく見てて、バナナマン、タカアンドトシなど、色々知ってますよ。寮の中で、同期のみんなで『そんなの関係ねえ!』とパンツ一丁で叫びながら暴れてました」

勝ち得た自信

インドネシア人も頑張れば、日本人に負けないんだって、それを証明したかった

3年目になると溶接の欠陥を出すこともなくなり、たとえ失敗しても、自分で修復できるまでに溶接の腕を上げたアリフさん。日本人が出した欠陥もアリフさんが直した。

「インドネシア人も頑張れば、日本人に負けないんだって思いました」

工場内で開催された溶接コンテストでも優勝し、アリフさんの溶接の腕は工場で一番の凄腕となり、日本人社員を唸らせた。

日本語能力試験2級(N2)合格

1週間に1回、毎週木曜に、職場の日本人が日本語を教えてくれる勉強会があった。仕事終わりの17時から19時までの2時間。よって木曜日に限っては残業はなかった。

「定時で帰れる格段の喜びと、日本語が勉強できる喜びとで、木曜日はお気に入りの曜日でした。先生は一生懸命に教えてくれ、毎週宿題もありました」

2006年の日本語能力試験では3級(現在のN3-4相当)に合格し、翌年2007年の同試験では難関といわれる2級(現在のN2相当)にも合格した。

「仕事の空き時間に自分で買った問題集でコツコツと勉強してました。合格したことも嬉しかったですが、担当の先生が自分のことのように喜んでくれたことが何よりも嬉しかった」

慣れ親しんだ「日本」との別れ

日本での生活も3年目を迎えると、充実した日々を送れるようになった。

「すごく満足している自分がいた反面、いくらお金を貯金しても満足しなかった。そこで思ったんですよ。そっか、お金ってそういうもんなんだなって。持てば持つほど欠乏感を感じるものなのかなって」

帰国が近づいてくると、複雑な気持ちになったという。早く帰って家族や恋人に会いたいという気持ちと、日本での生活を続けたいという気持ちが混在していた。

「毎週一緒にバドミントンをしていた日本人や、日本語を教えてくれた先生、同じ工場でよく面倒を見てくれた日本人の先輩との別れは本当に辛いものでした。その先輩は、車でスキーに連れてってくれたこともあったし、彼の結婚式にも呼んでくれたんです」

アリフさんの日本での生活が充実すればするほど、別れの寂しさは、いっそう深いものになっていった。しかし、その深さこそが、日本での経験の深みであり、この3年間の糧であるのではないか。

第4話(最終話)につづく

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