磐田市出身のヒップホップグループ
磐田市出身の日系ヒップホップグループ「Green Kids」を知っていますか。磐田市東新町の団地で育った日系ブラジル人・ペルー人が中心のグループです。
外国をルーツにもつ彼らの生い立ちをストレートに綴ったリリックが特徴的で、ずっと日本で「ガイジン」として生きてきた閉塞感や疎外感をラップにのせています。
「団地」という抽象概念
幼少期から彼らの居場所であり、拠り所だった東新町の「団地」でグループが結成され、そこから一気にスターダムにのしあがろうとする、そんなストーリー性のある彼らの音楽活動に注目が集まっています。
彼らは、いじめ・不登校・非行・格差などのキーワードを内包する自分たちのバックグラウンドを「団地」という抽象概念に集約させています。そして、その「団地」という概念を、「環境」や「街」と言い換えてこう歌っています。
環境なんて関係ないさ 逆に今この街に感謝
ラップをとおした復権運動
彼らは自分たちが置かれた逆境をラップで切り裂き、どうにもならないその環境を自分たちのライムとフロウで乗り越えようとしています。「ガイジン」として育ち、社会と関わるための教育を十分に受けられなかった彼らは、今、日本語で自分たちのことばを紡ぎ、自らを復権しようとしているのです。それは、彼らのレコンキスタとも言えるでしょう。
あえて「日本語」を武器に
ある側面から捉えると、学校教育や日本語教育の欠如や不十分さによってドロップアウトした彼らですが、そこからの復権にあえて「日本語」ということばの力を武器にして、自分たちの置かれた立場や境遇、過去や現実と正面から向き合い、乗り越えようとする姿はとても勇敢に見えます。
日本語教育に「逆に感謝」
環境なんて関係ないさ 逆に今この街に感謝
歌詞の「逆に感謝」とは、その感情がひっくり返る前は「嫌悪」であった、という意にとれます。昔は嫌悪していたその対象には、上述の「団地」という抽象概念に含まれる不登校やいじめ、非行や格差などの要素が含まれるでしょう。そしてその嫌悪の対象には、日本語教育も含まれているということを、日本語教育関係者はしっかりと受け止めなければいけません。
日本語教育の敗北
外国をルーツにもつ子どもたちに対する日本語教育で一番大切なのは、子どもたちが現実を切り拓くことのできる「ことば」を提供することです。はたして日本語教育は、発育期だったGreen Kidsに「ことば」を提供できたのでしょうか。いいえ、できなかったからこその「逆に感謝」なのです。そう、彼らのストーリーにおいては、学校教育や日本語教育は無効であり、そして今、彼らに上から目線で感謝されているのです。
エピローグ
いつもならどこにも響かないマイノリティの「声」ですが、Green Kidsの「声」はラップという発信力のある媒体にのって多くの日本人や日系人の耳に届いています。彼らのライムが今、人々に夢や希望を与えているのは、皮肉なことに日本語教育が彼らに夢や希望を与えられなかったからこそなのかもしれません。
環境なんて関係ないさ 逆に今この街に感謝
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