俺が日本語学校の仕入れ業務のオリエンを受けたときの話

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俺は日本語教師として都内の日本語学校でテキトーに日本語を教える日々を送っていた。それなりにノーストレスで気楽にやっていたんだが…。

そんな矢先に、元営業マンで女好き且つ酒好きというだけの理由で、俺は各国現地での留学斡旋の募集担当をさせられることになった。

ただ、留学斡旋と言っても一般の日本語学校のようなクリーンな留学ビジネスではなく、俺がこれから担わされる業務は、オフホワイトどころか、限りなくブラックに近いグレーゾーンにある領域だった。

その業務は、各国現地の美女たちに日本留学の話を持ちかける留学斡旋の仕事で、業界用語で「仕入れ」というらしかった。

俺はその担当として現地の最前線に送り込まれ、日本語学校が提携するキャバクラで働けそうなキャバ嬢候補を選定し、日本に連れてくるというミッションを担わされた。

グレーどころか、ブラックな臭いがぷんぷん漂っていた。完全アウト間違いなしだった。

校長
校長

ま、日本語学校の留学ビジネスなんてのは、多かれ少なかれそんなものですよ。

校長はいつもの脳天気な顔で笑っていた。

俺

嫌な予感しかしねえぜ。

校長
校長

大丈夫ですよサナダ先生。今から私のオリエンを受ければ、仕入れ業務の心構えができますから。心配いりません。

俺は渡航前のオリエンテーションとして、校長による仕入れ業務のレクチャーを受けることになった。

校長による渡航前オリエンテーション

校長
校長

では、仕入れ業務のレクチャーを始めましょうか。

俺は日本語学校の会議室で、校長の4時間にも及ぶ事前レクを受けた。

校長の武勇伝は最高に退屈だったが、それ以外の内容は意外にも具体的で実用的だった。

その内容を復習がてら簡単にまとめてみよう。

荷物について

スーツケースはNG。バックパックは見た感じ観光旅行者の印象となるためこれもNG。推奨はボストンバッグ。なんとなく野暮ったい感じに見えて、現地に溶け込める。

荷物の中身は最小限にとどめる。3分でチェックアウトを済ませる必要があったり、荷物を持って現地人を装って移動したり、ときには荷物を担いだまま通りを全速力でダッシュしなければいけない局面もあり。

俺

荷物担いで全力ダッシュって、どんな局面だよ・・・。

パスポートは命の次に大切なものとしてしっかり管理すること。来日候補となった美女の連絡先リストは命より大切なものであり、死守すること。

服装について

服装はオフィスカジュアル。ワイシャツにスラックス。それよりカジュアルだと現地での信用が得られにくいし、逆にネクタイはかしこまり過ぎで多くの国では蛇足になる。

靴は安物でいいので革靴。スニーカーでは商談の際に舐められる。

時計は少し良いものを身につけておくと現地での信用を得られやすい。

髪型について

髪の毛は短くすることをおすすめする。とくにウズベキスタンなどの中央アジアなんかだと、男性で少しでも髪が長いと現地人に後ろ指を指される。裾は刈り上げ、前髪は短くしてオデコに撫でつける。このスタイルならタリバーンもケチをつけてこない。

髭は2、3日に一回剃るぐらいでよい。日本人は童顔なので、貫禄をだすためにも無精髭が生えてるくらいがちょうどよい。

ホテルについて

宿のグレードは中級ホテルを選ぶべし。高級ホテルは目立ちすぎるし、安宿は余計なトラブルに巻き込まれることが多いため敬遠すること。ただし、日本人宿の場合は、安宿でも積極的に宿泊することを推奨する。情報を仕入れる絶好の機会である。

ホテルの予約はせずに、飛び込みで空室確認をしてチェックインすること。

行動規範について

目的地には前日に到着し、町や人の雰囲気を下調べしておくこと。印象でよいので、町のイメージを捉えて、話の種を仕込んでおくとよい。

仕事のつながりで誘われたら基本、誰にでもついていくこと。危険をかえりみずに同行していると、思わぬところで良い話や情報に出くわす。お誘いを断ることは絶対NG。

俺

俺: 子どもの頃、言われたよな。知らない人について行っちゃダメって・・・。

各国各都市の現地で色々とお世話をしてくれる現地人のコーディネーターの連絡先を渡すが、事前に電話連絡はせずに、飛び込みで訪ねること。コーディネーターと言えども、裏切りがないわけじゃない。電話するにしても、現地についてから連絡すること。

仕入れについて

日本留学説明会のプレゼンでは、とにかく笑いをとることを心がけよ。堅苦しい説明では誰も日本留学なんて興味を持たない。日本留学にではなく、サナダという人柄に興味を持ってもらえることを目指すとよい。

個別に留学の話をもちかける際は、兄弟や姉妹のセットは避けるべし。来日後、キャバクラで働くにあたり、親族の存在が障壁になるケースが多いため。

顔や胸の点数と同じくらい性格も重視すること。性格の良し悪しを一瞬で見極める必要あり。

どんなに親しくなっても、留学志望者との現地での色恋沙汰は避けるべし。そこで愛が成就し、色んな計画や志が完結してしまうと、日本留学に至らないし、サナダさんも帰国できなくなってしまう。

非常事態

身の危険を感じたら、とにかく逃げること。一刻も早くその町を離れること。

基本、日本語学校はサナダ先生の味方だが、遠隔ではほとんど手助けできない。現地のコーディネーターへの連絡や、最終的には在外公館に問い合わせるくらいのサポートはできる。

校長
校長

まあ、基本、自力で頑張ってちょんまんげ〜。

出張精算について

出張経費は帰国後にまとめて精算する。もらえる領収書はすべてもらっておくこと。

以上

旅立ちのとき

いよいよ中国、ウズベキスタンをめぐる旅立ちのときが迫っていた。

これはまだ2005年の話で、当時はまだ、スマホもなく、SNSも普及していない時代だった。今なら瞬殺できるタスクも、当時は1日がかりで町を歩き回る必要があった。

そんなIT夜明け前夜の時代に、俺は日本語学校の仕入れ担当として、中国、ウズベキスタンを訪問し、各国の美女たちを日本に留学させる、という業務を遂行することになった。

次回の記事からは、いよいよ現地での滞在記となります。お楽しみに!

<つづく↓>

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