俺が中国出張中に現地キャバクラでパスポートを失くしたときの話

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皆さん、こんばんは。

俺

ねじれ日本語教師のサナダです。

前回の記事では俺が香港を経由して中国本土の深センに入り、そこからバスを乗り継いで広州に到着した話をした。

出張のくせしてなんで貧乏旅行者のような移動を強いられているのかという不満を感じつつも、無事に広州のビジネスホテルにチェックインすることができ、俺は安堵してスヤスヤと寝入っていた。

のだが、

リリーン、リリーン!

俺の部屋の電話が鳴り響き、受話器をとると、

電話の声
電話の声

ちゃんちゅーしぇーしゅーよーちぇーまーしゅーてきとーちゅーごくご〜。

中国語がまったくわからない俺におかまいなしに、受話器からは女性の声がする。

俺は一度目、二度目は丁重に受話器を置いたが、電話が5分、10分おきに何度も何度もかかってくると、怒りは頂点に達した。

俺

ふざけんな!こら!!もう電話かけてくんな!!!

俺はブチ切れて受話器に向かって大声で怒鳴った。受話器を思いっきり叩きつけてベッドに潜り込んだ。

それでも5分後には、また、

リリーン、リリーン!
電話の声
電話の声

ちゃんちゅーしぇーしゅーよーちぇーまーしゅーてきとーちゅーごくご〜。

俺

なんなんだよ、勘弁してくれよ・・・

そもそも、何の用件の電話なのだろうか。誰がかけてきているのか。ホテルの人間か、あるいは外部からなのか。

俺は延々と繰り返される理解不能な電話をやめさせるため、フロントに苦情を言いに行くことにした。

校長
校長

貴重品は肌身離さずじゃぞ。ひゃっはっはっは。

俺は海外渡航のオリエンをしてくれた校長のことばを思い出し、パスポートと現金の貴重品だけは身につけて部屋を出てフロントへ降りた。

ホテルのロビーに中国人のおばさんが・・・

フロントに行くと、受付は電気も消えていて誰もいなかった。

フロント前のロビーのソファには中国人のおばさんが一人、座っていた。

嫌な予感がした。

俺はこれまで、前職の接待業務やプライベートで、東京のいろんな夜のお店を見てきた。その経験から、このソファに座っている中国人のおばさんは、そんな夜の仕事に関わっている匂いをぷんぷんに放っているのがわかった。

中国人のおばさん

俺は目を合わせないように、そっと自分の部屋に戻ろうとした。が、

中国人おばさん
中国人おばさん

おにいさん、お酒飲みたいある?

俺

や、やっぱりそうきたか。

俺は予想通りの展開に、苦笑した。

中国人おばさん
中国人おばさん

かわいい女の子いるあるよ。

俺

いや、もう寝てるんで。ていうか、ずっと俺の部屋に電話してきてたのって、あなたですか?

中国人おばさん
中国人おばさん

そう、あるね。中国人はみんな親切あるね。いいお店紹介するね。

俺

いや、だから、もう寝てるんで。疲れてるし、もう電話やめてもらえますか。

中国人おばさん
中国人おばさん

大丈夫あるね。私、たくさんお店知ってるあるね。紹介するね。親切、親切。

そう言うと、その中国人のおばさんは立ち上がり、片手をマイクにして歌いはじめた。中国の演歌だった。

俺

な、なんなんだ、この地獄のような光景は・・・。

俺は直感的にこのおばさんから逃れるのは無理だと悟り、諦めることにした。強引に断ることもできたが、この中国人おばさんに同情の気持ちが芽生えていた。

やはりとんでもなく疲れていたのだろう。俺は明らかに判断を誤り、このおばさんに着いていくことにした。

中国人おばさんはすぐにタクシーを呼び、上下スウェットの部屋着のままの俺を夜の広州の街に連れ出すことに成功し、めちゃくちゃ上機嫌だった。

中国 広州のキャバクラ

中国人のおばさんはタクシーの運転手とあれやこれやと話していた。道順のことなのか、店のことなのか、あるいはただの天気の話なのか、俺には見当もつかなかった。

タクシーが暗がりに止まった。タクシーを降りると、暗がりの奥に赤いネオンの入口が見えた。

中国人おばさん
中国人おばさん

あの店行くあるね。いい女いっぱいあるね。

俺は少し緊張していた。ただ、いつだって夜のお店に入るときは、期待と不安が混ぜこぜになって、この種の緊張を感じるものだ。

店内に入ると、広いホールの中にいくつものソファが並べられて、ローテーブルにはウイスキーやら焼酎やらのボトルが並んでいた。

いらっしゃいませ〜!

店内から女性が出てきて、俺を奥にあるソファに案内した。

中国人おばさん
中国人おばさん

日本人あるね?何のむ?

俺

じゃあ、ビールで。

俺はソファにゆったりと身を沈め、店内に流れる中国の流行歌と思われる音楽を聴きながら、ゆっくりとビールを飲んだ。

中国人おばさん
中国人おばさん

かわいい女のコ、いっぱいいるね。ちょっと待つね。

俺がビールを飲み干すと、ウイスキーグラスを4、5つお盆に載せて女性たちが群がってきた。

中国人女性たちは一見、無愛想だったが、こちらが話しかけると、にこやかになった。そのにこやかな表情には素朴さが残っていて、もしかすると中国の田舎町から出てきて、この店で働いているのかもしれないなと思った。

どこの国でも夜のお店で働く女性の境遇や経緯、状況は似たり寄ったりなのかもしれない、なんてことを考えていると、やけに親近感がわいてきて、楽しくなってきた。

俺は中国人の女のコたちと変顔や下ネタのコミュニケーションをとりながら、ウイスキーをロックで数杯飲んだ。明らかに疲れてはいたが、その疲れが俺を心地よい酔いへと誘った。また、疲れだけではなく、旅の偶然に身を任せ、楽しい時間を過ごしていることの充実感や、店の女のコたちの純朴なリアクションに心底楽しんでいることが、ウイスキーを飲み干すペースを加速させた。

俺

今夜は酒が進むぜー。

楽しい中国のキャバクラから帰って爆睡

店内の時計が午前2時を回ると閉店時間とのことで、俺は支払いをした。

心のどこかで「ぼったくられんじゃねえか」という危惧があったのだが、支払い金額はまっとうな金額だった。いや、むしろ、こんなに安いの?と思うほどの金額だった。

俺はタクシーを呼んでもらい、千鳥足にならないように気をつけながら、店を出てタクシーに乗り、ホテルに戻った。

ホテルの自分の部屋に戻ると、そのままベッドに倒れこみ、爆睡した。

予定では翌朝8時には起きて桂林行きのバスに乗るはずだったのだが、昨夜の暴飲の影響で俺は昼前の11時まで寝てしまい、起きたときには寝過ごした罪悪感と、これから荷造りをしてチェックアウトして、長距離バスに乗ることが、心底面倒に感じた。

圧倒的な異変に気づく

それでも俺は意を決して、ベッドから起き上がり、荷物をまとめて出発の準備をした。

俺は荷造りをしながら、あれ?と思った。

あれ?

いやいや、よく探そう。

あれ?

やっぱりないな。

落ち着け、絶対にどこかにあるはずだ。

あれ?

ないぞ、ないぞ。どこにもないぞ。

あれ?

ありとあらゆるところを探してない。

となると、もう、どこにもない。

パスポートがないぞ!

俺は頭をかかえた。

校長
校長

中国やウズベキスタンでは、身元を証明することがめちゃ大事だ。だから、絶対にパスポートは失くすんじゃないぞよ。

そんな出張前のオリエン時の校長の声が聞こえてくるようだった。

が、ないものはない。

パスポート、失くしちまった!

俺は冷静に思い出して見た。昨日、電話のベルで起こされて、フロントに文句を言いに行くときに、貴重品は肌身離さず、と言ってスウェットのポケットに入れた記憶がある。

飲みにいったキャバクラの店内に入るとき、身分証チェックがあるかもしれないと思い、ポケットの中に手を入れたとき、パスポートを確かに触った感触があった。

ということは、昨日のキャバクラのソファで落としたか、タクシーの中で落としたかのどちらかだった。

俺

くそー、面倒なことになっちまった。今日中には、桂林に出発しないといけないのに、どうすんべー!!

連絡がとれない客引きの中国人おばさん

とにかく俺は昨日の飲み屋とタクシーに問い合わせる必要があった。

そのためには、まず昨日の客引きの中国人おばさんと連絡をとる必要があった。

俺はホテルの受付で例の中国人おばさんのことを話したのだが、まったく通じない。ことばが通じないのもそうだが、この状況がまったく通じていない。

パスポートを失くしたということまではなんとか伝わったようだが、

・昨晩に電話攻撃を受けたこと、

・それが客引きの中国人おばさんだったこと、

・その中国人おばさんに連れられてキャバクラに行ったこと、

・そのキャバクラでパスポートを落とした可能性が高いこと、

・だからキャバクラの店名か連絡先が必要で、そのためには例の客引き中国人おばさんと連絡をとらなければならないこと。

だけど、こんな複雑な状況、なにも通じねえ!

ホテル受付の中国人のおじさんは、心底、面倒臭くなったのだろう。表情が超絶に不機嫌になった。そして彼は俺の顔に唾を飛ばしながら怒鳴った。

あんたなー、落し物したんなら警察行けやー!!

まあ、この受付のおじさんの言うことも一理あると思った。どこの国でも落し物をしたら、警察に行くのが常套手段なのは確かにそうだと思った。

次回、俺は中国の警察に行き、落としたパスポートについて相談することになる。

<つづく↓>

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